2025年4月26日〜5月1日の日程で日本・横浜で開催されたACM CHI 2025において、代表・伊賀聡一郎はWORKSHOP “Bridging HCI and Industrial Manufacturing”においてオーガナイザー/ファシリテーターとしてお手伝いしました。

このワークショップでは、製造業におけるヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)応用について、産学連携における課題と将来の協働についてディスカッションしました。伊賀は2つのセッションにおいてファシリテーションを担当しました。

■セッション1:アカデミアと産業界の摩擦を超えて
本セッションでは、製造現場におけるアカデミアと産業界の協働に存在する摩擦について検討しました。両者の間には、価値観、時間軸、成果の捉え方など根本的な違いがあり、具体的な課題として、アカデミア側は知識を無償と捉えがちで責任の所在が曖昧である点が挙げられました。一方、産業界側は短期的成果や詳細な説明を求める傾向が強く、柔軟な研究遂行を難しくしています。こうした違いを乗り越えるためには、互いの立場や役割を理解し尊重するための明確な連携フレームワークの構築が求められます。

■セッション2:テクノロジーがひらく多様性への扉
本セッションでは、自動化やAIの進展によって、これまで物理的制約によって参画が難しかった高齢者や障害者、女性など、より多様な人材が製造業に関わる可能性が広がっている現状が共有されました。しかし同時に、設計段階での前提の偏り(例:男性体型を基準としたデバイス設計、色覚への配慮不足など)が、こうした多様性の実現を妨げている実態も明らかになりました。また、多様性は個人の特性にとどまらず、組織文化や制度設計にも深く関わる課題であるという認識が共有されました。今後は、相互理解に加え、メンタリングやリーダーシップの場における多様性の推進が、持続可能な組織変革の鍵となります。